2017年05月10日

諫早干拓の反公共性


昨日(5/10)、本ブログ「諫早干拓の反公共性」公開後、twitterで更新のお知らせをしたのですが、本日(5/11)twitterを確認したとろ、そのページは見当たりませんとの表示が出てきてビックリ。原因を調べたところtwitter上に表示されている「諫早干拓の反公共性」をクリックすると、本ブログとは異なったアドレスが表示されていました。見当たらないはずです。twitterからは不正ログインの連絡はきていませんので、どのようにしてアドレスが書き換えられたのは不明ですが、本ブログの正しいアドレスはashi-jp.sblo.jp/article/179701438.htmlです。次の更新までは、TOPページashi-jp.sblo.jpでも同ブログが表示されています。なお偽アドレスは削除しましたが、赤文字の数字の部分が「17901194」と書き換えられていました。(5/11)


前回、前々回のブログ更新後に、タイトルなし、本文なしの空白のままのブログが次々と更新されるという異変が発生しました。当初はその原因が分かりませんでしたが、実は、twitterを使った嫌がらせであることが判明しました。twitter(会社)から、通常ではないログインがあった旨連絡があったのですが、twitter上には盗まれるような情報もなく、さして問題も感じずにそのまま放置していました。ところが、その後、同じ連絡がtwitterから届きました。ちょうど、ブログ更新後に再び空白のブログ更新がなされていたのですが、すぐには両者が結びつきませんでした。異変が続くので問い合わせをしていたブログ運営会社から、空白のブログ更新はtwitterからなされているようだとの指摘を受け、twitterへの不正ログインが何のためになされていたのか、やっとその理由が分かりました。


パスワード変更は面倒なので、いずれも開設以来一度も変更せずにきたのですが、すぐさまパスワードを変更し、ブログとtwitterを自動的に連動させていた設定も解除しました。以降は、不正ログインも空白のブログ更新も発生していません。twitterからの連絡によると、不正ログインは2度とも福岡市博多区からなされているとのことでしたが、博多区内には知り合いはいませんので、見知らぬ誰かが嫌がらせをしていたようです。どこの誰か教えていただけないかとtwitterに問い合わせましたが、これには返信はありません。



では、本題です。4月17日、諫早湾干拓の潮受け堤防排水門開門差し止めを求めて、営農者らが国を提訴した裁判の判決が長崎地裁で出されましたが、地裁は農地に甚大な被害が出るとの理由で差し止めを命じました。この裁判の前段として、漁業者側が起こした裁判で、2010年12月、開門をkodomo-bb3s.gif命じる福岡高裁の判決が出ましたが、この判決に対して、時の菅直人総理が野党時代に反対していたことから、控訴しないことを決断、福岡高裁の判決が確定しました。翌2011年4月、営農者らが国に対して開門差し止めの訴訟を提起したものの、国は開門の必要性について全く主張せず、当然のことながら原告営農者側の全面勝利の判決となりましたが、25日、国は控訴しないことを表明し、あらためて開門しない方針を明確に示しました。


諫早湾干拓事業をめぐっては漁業、農業双方から裁判が起こされ、相反する判決が出されるという異常な事態になっていますが、時事ドットコムの諫早湾干拓訴訟をめぐる動きには、干拓事業と訴訟との関係が、工事開始から現在にまで至る時系列に沿って簡潔にまとめられています。問題は、この事業が我々国民にとって真に有益なものであるのかどうかという点にあります。この事業には巨額な税金が投入されていますが、これらの費用については朝日新聞WEB201746先見えぬ諫早干拓事業、続く税金投入 閉め切り20年に分かりやすく図表化されたものが出ていましたので、これを参照しました。


記事によりますと、同干拓事業の総額は2530億円、消えた干潟1550ヘクタール、売却額50億円。今後も発生し続ける費用は、有明海再生事業498億円(予算ベース)、調整池水質改善352億円(決算ベース)、漁業補償7億6500万円=857億6500万円ですが、この857億6500万円は、現時点での金額ですので、今後はさらに増加しつづけることになるわけです。


調整池とは、諫早湾の深奥部を潮受け堤防(ギロチン)で締め切って造られたものですが、流れを遮断しているので、池の水質汚染が昂進、常態化し、絶えず水質改善策を講じざるをえない状況です。(参照:諫早湾開門ほんとうに大丈夫なの?WWFジャパン)その調整池水質改善には長崎県も費用の一部は出しているようですが、長崎県には国からの交付金などが入っているはずですし、干拓工事完了後も、農地維持のために巨額の税金が投入されていることは紛れもない事実です。この事実は干拓事業には何ら正当性のないことを証明していますが、我々国民はもとより、農業当事者自身もこの事実を直視すべきです。本来ならば、農地維持費用は一般農業者同様に、農業者自身が負担すべきではないですか。しかしその額が巨額ゆえに、農業者自身が負担することは不可能であることから延々と税金が投入され続けているわけです。諫早湾干拓事業の現在の姿は、日本では公共事業にいかに杜撰に巨額の税金が垂れ流し的に投入されているかを象徴していますが、さらに問題なのは、この干拓事業で何が失われたのかということです。


失われたものは、いうまでもなくかつては宝の海と呼ばれていた豊饒な有明の海です。漁業被害では、ノリ養殖がその筆頭事例として挙げられますが、西日本新聞によると、有明海西部(調整池に近い海域)でのノリ養殖は、調整池から流入しつづける汚染水の影響をもろに受け、今なお壊滅的な打撃を受けているそうですが、反対側の東部でのノリ養殖は近年は豊作が続いているという。と聞けば、干拓事業の悪影響は有明海全域にまでは及んでいないのかのような印象を受けるかもしれませんが、有明の漁業はノリ養殖だけではありません。


葦書房刊の中尾勘吾写真集『有明海の漁』(1989年刊、15345+税)は、干拓事業による埋め立てが始まる前の有明海を詳細に記録した写真集です。中尾氏は長崎県在住の登山家、写真家ですが、高校の教師をしながら、干拓で消滅するかもしれない有明海を記録しておきたいとの思いから写真を撮り始め、7年かけて有明海全域を回って写真に収められ、それをまとめたのが本写真集です。しかし有明海の全貌をとらえるにはさらに時間が必要だと、中尾氏は「あとがきに」に記されています。有明海はそれほどに奥深い世界だということですが、本写真集には、有明海の漁と人々との暮らしの在りようとの、有機的につながりが重層的に映し出されており、見る者にも有明海が育んできた世界の豊饒さが十分に伝わってきます。


中尾氏は本写真集刊行のぎりぎりまで撮影を続けておられたようですので、198612月の干拓事業の工事着工時前後までの有明海の姿が記録されていることになりますが、おそらく干拓事業前の有明海の記録としては、他に類書、類例はないはずです。干拓事業による漁業被害については、干拓事業前の漁についての記録が乏しいことが、被害の証明を難しくしているとの記事が西日本新聞に出ていましたので、その意味でも本写真集の貴重さがお分かりいただけるかと思います。本写真集には、漁船上や水揚げされたばかりの、漁の現場で撮影された多種多様な魚介類の写真が収められていますので、裁判でも生の証拠となりうるものばかりです。


有明海といえば、ムツゴロウやタイラギ、シャミセンガイ、ワラスボ、アブッテカモ、エツなど有明海や潟特有の魚介類が有名ですが、こうした魚介類はもとより、一般的なタイやヒラメやカレイや車エビやタコ、イカ、スズキ、カワハギ、コノシロ、フグ、タチウオ、サワラ、ウナギ、シャコ、ハゼ、カザミ(カニ)、アサリなども獲れていたという。写真集には64種の魚介類が紹介されていますが、おそらく現在、有明海からはこうした魚介類はほとんど姿を消しているのではないか。有明海ではさらにノリ養殖のほかに、昆布やわかめの養殖もなされていることが紹介されていますが、おそらく昆布やわめの養殖は消滅させられたのではないか。干拓事業による漁業被害は、ノリ養殖だけではなく、干拓事業前には、事実として収獲されていた多種多様な魚介類の存在の有無をとおしても明らかにすべきではないか。


写真集には、干拓事業が始まる前からも、有明海の漁は様々な障害を受け、魚種によっては漁獲量が徐々に減少している状況も記録されていますが、そうした状況下でも、固有種以外にも非常に多種多様な魚介類が収獲され、漁業者の暮らしを支えていることが写真からも伝わってきます。漁によって人々の暮らしが支えられているということは、豊漁を祈り、豊漁に感謝する様々な祭りや風習、習俗等が代々受け継がれ、地域に根差す文化として人々の暮らしを豊かに彩ってきていることも、写真集は雄弁に語っています。


しかし有明海の漁が衰微した現在、こうした祭りや風習も一部では消滅させられてしまっているのではないか。とするならば、有明海沿岸で暮らす人々が受けた被害は、漁業被害だけで算出されるものではなく、それ以上の甚大なものになるはずです。この干拓事業の最大の問題は、漁業者が受けた甚大な被害が、その犠牲に耐えうる事業の結果によるものではないという点にあります。干拓事業の目的は当初予定より転々と変わり、最終的には農業用地利用に行き着きましたが、漁業を犠牲にしてまで農地のために干拓する必然性は皆無です。干拓地は当初の予定では農業者に直接売却するはずでしたが、希望者が少なく、長崎県が設置した農業公社が50億円で買い取り、農業者に貸し出すという方式になったらしい。おそらくタダ同然で貸し出しているのではないか。干拓事業のみならず、農地運用にも税金投入です。その上、調整池には半永久的に水質改善のために税金を投入せざるをえません。これほど無意味な税金の無駄使いはあるでしょうか。


調整池の水質改善も有明海の再生も、海と海に棲む生き物たちが担ってきた自然の治癒力を回復させ、その力を最大限活用する方策を探る以外には根本的な解決策はないはずです。以下は、西日本新聞の記事「有明海は今」を参照したものです。アサリなどの二枚貝は、プランクトンを食べ、きれいな海水を吐くことから海の「浄化器」と呼ばれているそうですが、中でもタイラギの浄化力は群を抜いており、有明海最大の「ろ過装置」とまで呼ばれているそうです。西海区水産研究所によれば「最盛期の年間漁獲量の3万6000トンのタイラギが生息すれば、有明海の3割に当たる湾奥部を6日間で浄化できる」という。湾奥部とは潮受け堤防で締め切った調整池のことですが、自然の治癒力のもつ凄さが伝わってきます。調整池と有明海の浄化のために、これまで850億円もの巨額の税金が投入されたものの事態は全く改善せず、今後も税金を延々と投入せざるをえないわけです。この事業がいかに正当性を欠いたものであるかを、あらためて認識せざるをえません。


こういう事業を強行してきた政治家と官僚は、この惨憺たる現実を直視するならば、のうのうと税金で生活してきたことを恥じて、この世から姿を消さざるをえなくなるはずですが、彼らには恥の意識はひとかけらもなく、今後もこの干拓地に巨額の税金を投入しつづけるつもりらしい。長崎県産の農産物が福岡にも大量に流入してきていますが、他の農業者並みに農地維持費用を自己負担していたならば、非常に高額な価格にせざるをえないはずです。開門に反対するのであれば、有明海の再生費用とまではいいませんが、少なくとも農業用地のために造られた調整池の浄化費用は農業者自身が負担すべきではありませんか。国が全ての責任を持つとの約束で入植してきたのであれば、我々国民は国に対して、不当な税金浪費の差し止め請求並びに損害賠償請求をすべきではないかと思います。


膨れ上がる一方の日本の負債は、増大しつづける社会保障費が大きく影響しているとはいえ、公共事業の垂れ流し的浪費も負債増の要因の一つのはずです。公共事業の縮減を敢行した小泉政権時代や、自公政権の公共事業重視策を批判して「モノから人へ」策を推進した民主党政権時代の、惨憺たる結果を見れば、公共事業そのものの否定は我々の生活基盤の弱体化につながることも実体験済みですが、ただ目先の経済浮揚策としてのバラまき的公共事業の横行は、生活基盤の強化にはつながらないどころか、破壊するための税金浪費にしかすぎない事例も多発します。諫早湾干拓事業はまさにその典型例です。農水産省は、昨今の逼迫する物流事情を受けて、長崎県の農業者には格別に配送の支援までしています。干拓地の農業が失敗すれば、干拓事業そのものの失敗が白日の下にさらされるのを恐れて、ここの農業者のみを格別に支援しているのでしょう。保身のためには、税金の浪費も厭わず。


東日本大震災や熊本地震災害で、公共事業は突出して増加せざるをえない事態がつづいていますが、東京五輪も加わり、公共事業はさらに増大しています。そうした中で、震災2年目を迎えた今年の4月には、熊本地震の復興事業には、入札不調事例が昨年の15倍にまで達しているという事実が明らかになりました。入札不調の大半、8割以上には、1社の応札もなかったという。安いので請け負い手がいなかったわけですが、その一方で、干拓事業には垂れ流し的に税金が投入されつづけている理不尽さ。さらに加えて、大阪府が万博開催に名乗りを挙げ、政府も全面的に協力する姿勢を表明しています。もしも大阪府で万博開催が決まるならば、新たな公共事業が発生します。被災地に回るべき資材も人手も高騰し、復興事業は頓挫状態がつづくのではないか。


ここでNHKラジオで聞いた、公共事業に関するエピソードを紹介します。わたしの記憶にもないので、かなり昔の話だと思いますが、イギリスのロンドンで大火が発生した時の話です。被災地ロンドンの復興に際して、復興事業を優先させるために他の公共事業は3年間停止させ、カネも人も復興事業に集中的に投入して、短期のうちに見事に復興を果たしたという。以前に紹介したロンドン五輪後の施設を貧困層のための住宅に転用した話といい、ロンドン大火被害からの復興事業といい、こうした公共性は日本政治にはもっとも欠けているものではないか。


また何度か取り上げているドイツとの対比からも、日本政治の同様の欠損が見えてきます。日独は共に、敗戦国として戦後をスタートし、工業立国として世界に冠たる地位を築いてきましたが、その内実には大きな違いがあります。ドイツは冷戦終結の流れを受けて、東西ドイツ統合という、国家的規模での巨額の不良債権を抱えたものの、大学まで教育は無料、医療も無料という高度な社会保障体制を現在まで維持しつづけてきました。しかも国の借金はゼロかゼロに近い。日本との違いは余りにも大きすぎます。日独では、税金の使われ方が根本的に異なっていることは明白です。

必見!


タイ

仏の国の輝き


九国博



今の日本でドイツの真似をすることは不可能ですが、仮にドイツに倣うとしたならば、さらに巨額の負債を加速度的に増大させる結果になるだけです。今、我々がなしうることは、なぜ日独の間にはこれほどの差が生じてしまったのか、その背景を探ることだろうと思います。この差は何に起因するものなのか。日英間でも違いが明らかになった公共性に対する認識において、日独間でも根本的な違いがあったのではないか。諫早湾干拓事業という公共事業は、日本の公共事業の非公共性、というよりも反公共性を如実に象徴しています。日独は共に戦後をゼロからスタートしたにもかかわらず、日独の間にはなぜこれほどの違いが生じてしまったのか。諫早湾干拓事業は、その答えの一つになるはずです。


posted by 久本福子 at 10:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会時評

2017年04月30日

東芝問題の深層

諫早湾干拓の潮受け堤防排水門開門差し止め裁判をめぐり、25日、国は控訴しないこと、つまり開門しない方針を明確に示しました。漁民切り捨ての長崎地裁の判決につづき、国によるこの反国民的な決定には怒りを覚えますが、少し資料を調べる必要があり、この問題は次回に取り上げることにしまして、今回は東芝問題の深層に迫りたいと思います。


東芝は子会社ウエスティングハウス(WH)が抱える、7000億円かそれ以上ともいわれる巨額損失を受け、存亡の危機に直面していますが、その危kodomo-bb3s.gif機を成長部門である半導体事業を分社化し、売却することで乗り切ろうとしています。東芝の半導体事業売却には、主に海外からの買い手が殺到していますが、ここにきて急に、経産省をはじめ経済革新機構や政策投資銀行などの公的機関が救済に乗り出しています。理由は、半導体技術の海外流出を阻止するためだという。


 しかし、日経の経済テクノロジーWEB版(2017/4/26)に掲載されていた服部毅氏の「東芝のメモリー技術、すでに自らの手で海外流出させている」によれば、東芝は、すでに25年も前(1992年)から韓国のサムスンに無償で半導体技術を供与してきたという。のみならず、東芝はその後も韓国のSK Hynix

(ハイニクス)社と次世代半導体メモリーの共同開発に乗り出し、今現在も多数の東芝の技術者が韓国に出向しているという。つまり東芝は自ら進んで、合法的に自社の技術の海外流出を進めているわけです。何を今さら、技術の海外流出阻止なのか!しかも驚いたことには、東芝がHynix社とメモリーの共同開発に乗り出す前に、東芝と提携関係にあったアメリカのSanDisk社の社員が東と芝の半導体技術を無断で盗み出し、Hynix社に持ち込んでいたという。東芝と提携し、半導体売却で東芝と争っているWD社はSanDisk社を買収して一体化していますので、WD社には東芝を批判する資格はない!と言いたい。


日本人社員でも札びらに膝を屈し、自社の技術を韓国のライバル企業に差し出す例もありますが、その危険性は日本人社員だけではないということです。時によっては、日本企業には何の愛着も感じていない他国の関係者ならば、危険性はさらに高まるのではないか。しかし東芝の場合は、こういう経緯がありながらも、自ら進んで韓国企業と手を組もうという志向が非常に強い。数年前には、サムスンと提携して、コンピュータの新しいOSの開発に乗り出しましたが、実現せぬまま、失敗に終わっています。おそらくこの事業でも、OSの開発には失敗したものの、東芝の技術と技術者はサムスンに流れたはずです。日本には、坂村健氏が世界に先駆けて開発したOSTRONがあるというのに、なぜわざわざ韓国企業と新しくOS開発に乗り出す必要があるのでしょうか。愚かとしか言いようがありません。


サムスンとの共同開発に失敗したからか、東芝は今度は、坂村氏の提唱するIoTに関する新技術に参入するらしい。(IT Leaders 2016/5/6 杉田悟氏TRONの坂村氏が主導するIoTの新たなプロジェクトが始動)昨年のことなので、このプロジェクトに参加している東芝マイクロエレクトロニクスは売却の対象になっているのかどうか。どうやらこの技術は半導体メモリーではなく、システム開発的なもののようなので、売却対象ではないかもしれませんが、おそらく東芝がこの新技術を製品化すると、その成果はまたもや韓国企業に流れることになるはずです。というのは、先に紹介しました服部氏の記事によると、東芝は、今後新型メモリーは韓国で製造を行うことにしているからです。この「東芝」は、公的資金で救済される予定の東芝ということなのか。とするならば、政府主導による、非常に恐ろしい売国的事態となるわけですが、この辺の事情は不分明ゆえに、疑問提示にのみとどめておきますが、東芝は今後も韓国企業と密に関係を持続させるということだけは明らかなようです。共同開発とは、日本企業から韓国企業への無償の技術移転と同義であり、両者の密な関係は特定部門にのみとどまるものではないことはいうまでもありません。


なお服部氏は、公的資金による東芝救済は愚策だと批判しておられます。おそらく当事者以外の誰もが愚策だと思うはずですが、政府も当初は公的資金による東芝救済を否定していました。にもかかわらず、なぜ救済に急転回したのでしょうか。この謎を解くカギも韓国にあり。


実は、東芝による、巨額な不良債権の塊であるアメリカ原発企業WH社の買収も、韓国企業が陰に陽に絡んでいるのではないかというのがわたしの見立てです。東芝はWH社の米国版民事再生法を申請するにあたり、東芝と技術協力関係にある韓国電力に支援を要請したことが大々的に報じられました。技術関係にあるということは、東芝は原発分野でも自社社員を韓国に出向させ、技術協力をしてきたということですが、韓国が受注したアラブ首長国連邦での原発建設でも、東芝はひそかに技術支援をつづけたはずです。


つまり東芝は、半導体、IT関連事業のみならず、原発分野でも韓国(国家及び企業)と非常に親密な関係を結んできたことが、この支援要請報道で広く知れ渡りました。東芝に対する公的支援策が突如浮上したのは、この報道後のことでした。日本政府のこの急変は、アメリカ政府からの圧力(働きかけ)があったからだとの専門家の指摘もありますが、むしろ逆ではないかと、わたしは推測しています。


底なし沼のように負債が膨らんでいきそうなWH社をどう処理すべきか。米国版民事再生法を申請して、仮に民事再生が可能となったとしても、そのWH社を誰が、どこが引き受けるかが問題です。申請した東芝が引き受けるのが筋でしょうが、東芝の本心は手放したいはずです。しかし引き受け手はどこにも存在しない。民事再生を経て、不良債権の塊のようなWH社も、再生前よりは身軽にはなるはずです。そこでかねてより技術支援をつづけてきた韓国に呼び掛けたということだと思われます。韓国は自力では原発建設ができないにもかかわらず、原発の海外輸出には積極的であり、韓国電力自身もWH社に関心をもっていたということらしいので、WH社の引き受け手としては最適ではないか。


WH社は韓国の原発第一号を建設した記念すべき企業であり、もともと両者の関係は深い。日本では三菱電機がWH社の原子炉を使っており、東芝と同時にWH社の買収に名乗りを挙げたそうですが、東芝が三菱の倍の買収額を提示したことで、三菱は買収を断念したという。三菱は、東芝が自社の2倍もの金額を提示したことに非常に驚いたそうですが、おそらく韓国電力は、自分のところでも買いたいなどと言って、東芝を煽り立てたのではないか。


東芝は巨額の金を積んでまでわざわざ自ら進んでババを抜いたわけですが、今度はそのババをどこに回すか。韓国なら、原発技術の外部流出を心配しているアメリカ政府をも納得させられます。


この事実を知った日本政府(安倍政権)は、韓国電力がWH社を引き受けてくれるなら、これ以上の解決策はないとばかり、それまでの姿勢を転換したのではないか。ただ、ババ抜きのババのようなWH社を引き受けるとなると、韓国は東芝や日本政府に対して厳しい交換条件を示すでしょう。東芝救済に、突如として公的機関が関与し始めたのはその結果によるものではないか。民間ベースで進んでいた半導体事業の売却に、民間資金も含むとはいえ、税金も投入し、技術の海外流出を阻止するという名目で公的機関が強く関与し、公的機関が売却先を決定しようとしています。


しかし半導体技術の海外流出阻止は、全く無意味であることは服部氏の指摘するとおりです。服部氏によれば、半導体事業は毎年数千億円の設備投資をしなければ生き残ることができないほど、技術の変化が非常に激しいという。毎年数千億円もの設備投資が可能な企業は、市場占有率の非常に高い企業以外には不可能です。東芝の半導体技術がいかに優れているにしても、持続的に数千億円もの設備投資をつづけることは不可能です。また、公的機関が東芝救済で一時的に資金を投入しても、持続的な資金の投入は不可能です。となれば、一時的に投じた資金も無駄になるだけ。素人にはなぜこれほど巨額の設備投資が継続的に、半導体事業には必要になるのかは分かりませんが、半導体では市場の占有率の低い日本企業には、ほとんど不可能ではないかと思われます。


アメリカの調査会社が発表した、最新(2016年)の半導体ランキングは以下のとおりです。

1       Intel  

2       Samsung Electronics    

3       Qualcomm       

4       Broadcom Limited       

5       SK Hynix       

6       Micron Technology      

7       Texas Instruments      

8       東芝   

9       NXP    

10      MediaTek


韓国は2位のサムスン、5の位ハイにクスの2社。サムスンは、日本政府による韓国への技術移転の要請を受け入れたシャープや東芝から無償の技術提供を受けて、日米半導体戦争下(90年代前後)で、日本の半導体メーカが輸出制限を受けていた渦中に一気に市場占有率をアップ、その後も世界市場上位を維持。ハイニクスは今も東芝からの支援を受けているものの、東芝より上位にあり。今後もこの上下関係は変わらないはず。その上東芝は、新型メモリーは韓国で製造するらしいので、この差はさらに開くのではないか。


なお6位のマイクロンは、日本のエルピーダメモリー(日立とNEC半導体事業の合併企業)の破綻後、同社を買収したアメリカの企業。また上掲10位のうち、台湾、オランダの各1社を除いた残りは全てアメリカ企業。つまり、やや意外なことには、中国で製造している企業も含むとはいえ、アメリカ企業が世界の半導体市場の過半を占めていることになります。


なお、新分野である車載半導体ランキング10位には、韓国企業は1社も登場しておらず、オランダ(1位)、ドイツ(2位)、日本(3位、9位、10位の3社)、アメリカが並んでいます。車載用半導体では、今のところ、韓国企業に技術供与する日本企業はいない模様。つまり車載分野では、日本政府による韓国への技術供与要請は行われていないということです。


以上のような市場占有率の状況からするならば、政治的な判断で東芝に公的資金を投入することは、ほとんど無意味だということです。にもかかわらず、WH社処理のために韓国の言いなりになるならば、再び失われた20年、30年という大ダメージを日本経済に与えることになるはずです。韓国の言いなりになってきたかつての歴代自民党政権の韓国奉仕の結果、半導体市場で韓国企業が独占的に市場を占有する至ったわけです。その上韓国政府は、日本の献身的な奉仕については国民には一切知らさずに隠蔽してきたという過去の経験を踏まえるならば、いかなる事情にせよ、韓国に奉仕的に関与すべきではありません。おそらく東芝の半導体の売却先も、韓国企業のライバル潰しを意図したものではないか。新型メモリーを韓国で製造するという東芝を、なぜ公的資金を投じて救済するのでしょう。なお民主党政権下では、自民党や自公政権下以上の韓国奉仕がなされています。


600x100.gif
posted by 久本福子 at 01:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会時評

2017年04月22日

生前退位をめぐって

天皇陛下の退位をめぐる有識者会議の最終報告書が発表されました。退位後の制度設計についての提言をまとめたもので、この最終報告書が出される前に政府がまとめた特例法の骨子案のような、与野党対立を招きかねない大きな問題点は含んでいないようです。安倍政権はこの最終報告書も踏まえつつ、陛下の退位実現のための法案を早期に国会に提出する意向のようですが、波乱なく法案成立に至るかどうかは、予断は許しません。


衆参両院の正副議長のもとで進められてきた国会での与野党審議を受けて、政府がまとめた特例法の骨子案に対しては、与野党合意を無視したものだとkodomo-bb3s.gifの批判が出ています。今上陛下一代限りの特例法で対応したいとする与党と、憲法の規定どおり皇室典範を改正して恒久法とすべきだとする民進党などの野党との間には、埋めがたい溝がありましたが、この溝を埋めるべく、皇室典範に退位条項を付則として書き込むことで双方が合意しました。しかし骨子案ではこれが削除された上に、今上天皇一代限りの特例法であることと明示するために、法案名の「天皇」を「天皇陛下」に変更したという。


政府の骨子案では、与野党合意を無視した内容に変えられたのは事実のようですが、骨子案を野党各会派に提示して検討を仰いでいますので、批判を受けてまとめられる最終的な政府案は、合意に近い内容に変更される可能性もゼロではありません。しかしあえて合意案を無視した骨子案を野党に示した安倍政権の姿勢からは、批判は百も承知の上であったともうかがわれますので、陛下一代限りという基本線は譲らないだろうとも思われます。目下、安倍政権は問題百出ですが、この退位をめぐる問題は今後の国のあり方に根本的な影響を及ぼす重大事ですので、国会任せにせずに、日本国民全体で考え、論議を深化させる必要があると思います。


この問題の究極の論点は、古代からつづく、世界に類のない伝統を保持する天皇制をいかにして維持していくのか、この一点にあると思います。安倍政権というよりも安倍総理が陛下一代限りの特例法にこだわるのも、この世界に稀有な伝統的な天皇制を守りたいとの一心から出たものだと思われます。加えて皇族数の減少という厳しい現実もあります。皇族数が減少する中で生前退位の制度が恒久化されるならば、天皇制そのものの消滅という事態にまで至る可能性もゼロではありません。民進党などはそれを避けるために、女性天皇制ないしは女性宮家の創設を主張しています。中でも、もっとも実現可能性の高い女性宮家の創設を、退位の制度化とセットで提案していました。


女性宮家の創設は、女性天皇をも想定したものだと思われますが、これほど重大な問題を、急を要する陛下の退位問題とからめて提案してくる民進党の軽率さにはあきれています。退位の恒久的な制度化は皇族数の減少への対策なしには成り立ちませんので、民進党も女性宮家の創設をセットで提案せざるをえなかったのでしょうが、この問題の究極の論点に立ち返るべきではないかと思います。


日本の長い歴史の中では、女性天皇が在位した時代のあったことは事実ですが、この歴史的事実を根拠に、現代においても女性天皇の誕生は日本の天皇

制の伝統を損なうものではないとの議論も根強くつづいています。四民平等の民主主義の現代においては、男性の宮様も女性の宮様も民間からお相手を選ばざるをえません。女性宮家が創設されると、お相手の夫君となられた男性も皇籍に入られ、皇族の一員となられます。仮にその女性宮様が女性天皇になられた場合、その夫君は皇后様のような立場に置かれるわけですが、皇后様のようなお役目を務めることが可能なのかどうかは非常に疑問です。


古代と現代との最大の違いは、古代ないしは明治以前には明確な身分制度があったのに対し、現代では皇族を除けば全て平民です。身分制度のもとで古代では、一部の有力貴族とはいえ、貴族と皇族の婚姻も一般的に行われていましたし、臣籍降下という皇族から臣下(貴族)に降下する例も多数あり、貴族と皇族との垣根は非常に低い。天皇と臣下という身分上の違いはあったとはいえ、日常的に交流している天皇(皇族)と貴族の世界観には、そう大きな落差はなかったものと思われます。


一方、ごく少数の皇族と平民(民間人・一般国民)以外には存在しない現代では、両者の落差は非常に大きい。しかも現代の天皇は政治の実権は持たず(世俗からは離れ)、日本国民統合の象徴というお役目を負っておられます。象徴という抽象的なことばで表現されているお役目を、実際的な行動として果たされるのは、やはり大変なことだと思われます。天皇は負担になるようなお仕事はせずに、存在するだけでいいとの極端な意見もありますが、確かに天皇には存在するだけで象徴たりうる側面もあると思います。こうした天皇の存在感は何に由来するのかといえば、憲法や法律では表現しがたい、古代からつづく天皇家の長い伝統によるものではないかと思います。


この伝統は男性皇族のみならず女性皇族方にも受け継がれていることはいうまでもないと思われますが、女性の宮様と結婚されて民間から皇籍に入られた男性が、国民の敬意を受けるべく皇族としての資質を身につけていく道筋はあるのでしょうか。その場合、夫君である民間人男性が女性皇族に従うという関係にならざるをえませんが、男女同権どころか、女性上位すら珍しくはない現代とはいえ、こうした夫婦関係が永続しうるものなのかどうか、非常に疑問を感じざるをえません。皇族という非常に特殊な世界のこととはいえ、夫である男性の意向が強く働くことになるのではないかと思います。当然のことながら、皇室の伝統に大きな変化が生じる可能性は高くなります。


女性天皇を考える場合、身分制度下にあった過去の時代と、四民平等下で一握りの皇族と平民(一般国民)しかいない現代とでは、その結果の及ぼす影響は天と地ほどの違いが生じる可能性のあることも考慮すべきだということです。皇族数の減少は、緊急に対策を考えるべき国民的課題ではありますが、陛下の退位問題に絡めて、拙速に女性天皇や女系天皇を可能にするような案を提出すべきではありません。緊急性を帯びながらも慎重に検討を重ね、安定的な皇位継承が可能となるような対策を考えるべきだと思います。また生前退位は、識者の指摘にもあるように、天皇の政治利用を招きかねない危険性をはらんでいることにも留意していただきたい。

600x100.gif
posted by 久本福子 at 23:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会時評